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「……俺の扱い……ひでえ……」
未だにウジウジと、教室の隅に小さく座っている喜多嶋の背中からは、何だか黒いオーラがヒシヒシと伝わってくる。……流石に裕太も少し可哀想になってきた。
「まあまあ、喜多嶋よ」
「み、美波……!」
裕太に話しかけられた瞬時、喜多嶋の表情がパアァッと明るくなる。
「喜多嶋、さっきのクラスメイトたちの言葉をもう一度よく思い出してみろ」
「え、いやだよ! 更に落ち込むよ!」
「なあ、いいか? 誰もお前のことをアホだなんて言ってないだろ? お前はきっと恐らく多分、アホではないかもしれない可能性はあるよ。……バカだけど」
「…………」
「おう、久野! なんか手伝うことはあるか?」
「美波か、じゃあそのセロテープを取ってくれ」
「ああ、ほいよっ」
喜多嶋が本格的に使えなくなってしまったので、裕太も仕事に専念することにした。
「ねえねえ、“くのいち”。これちょっと私の力じゃ無理かも……」
とクラスメイト女子Aから、委員長様にお呼びが掛かる。
“くのいち”こと久野は熱血真面目野郎、言わずもがな筋肉マンだ。プール授業の際は隣に並びたくない男子ナンバーワンである(2年B組男子調べ)。
「おお、じゃあそれは俺が運ぼう。それから“くのいち”はやめてくれ。なにか女みたいじゃないか」
「ありがとー。え~? せっかく可愛いのにー」
クラスメイト女子Aもとい安達さんは、久野を見つめながら、いたずらっぽく笑った。
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