第一話:始まりは突然やってくる

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目の前にだんだんと駅が見えてくる。俺は更にスピードを上げる。 もう普通に走る車以上のスピードが出ている。 だんだんと息づかいが荒くなるのがわかる。飛行は魔力を消費するために、結構な疲労感にみまわれるのである。 だんだんと乳酸がたまっていって、辛くなってくるあんな感じに似ている…。 とりあえず駅に到着。 ぜぇぜぇ言いながらホームに入る。 その時だった。 目の前に止まっていた電車がガコン!という音とともに出発してしまった。 「あ…、あぁ…。」 その場でがっくりと肩を落とす…。 「あと1分早かったら間に合ったのにね。」 駅員さんが隣に来て、苦笑いされた。 「は、ははは…。はぁ…。」 俺は定期券をしまってとぼとぼと駅を出た。 もうすでに電車は行ってしまった。歩いて行くにしても遠すぎるし確実に遅刻する。残された手段は―― 俺は自分の握っている杖を見た。そして思いっきりため息をついた後で、杖にまたがり再び空へと飛び立った。
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