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処刑台の上に上がる。想像していたより遥かに小さい少年の登場に、場がざわつく。
黒鎧の執行者が罪状を読み上げる。
人々のざわめきは、段々と批難に変わっていく。
「…おい、跪け。その台に首を載せろ。…もっと前だ、顎をつくな」
執行者が少年に指図する。その手には漆黒の剣が握られていた。
少年はついに、前を向いて顔を見せる形になった。
そして彼は、俄(にわ)かには信じがたいものを見た。
目の前の群衆、その中に大切な人の笑顔があったのだ。
その笑顔は、彼に向けられた送別ではなく。
彼に振り下ろされる漆黒の剣に向けられたものだった。
(どうして、)
お前が中にいるのか。
(どうして、)
俺が分からないのか。
(どうして、)
人が死ぬという時に、それを喜べるのか──
こんな事が、あって良い筈がない。
彼の思考が停止した瞬間、裁きが下った。
おかしなもので、胴から離れた事により、彼の頭はかえって冷静になった。
真実を見付けるために、過去を振り返ってゆく。
(そうか…。)
全ては、遠い昔から始まったのだ……。
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