屋根裏部屋から、女は

屋根裏部屋の女

　女の住まう屋根裏部屋は、この地方では有数の資産家の豪奢(ごうしゃ)な邸宅の上に位置している。

　といっても、この資産家本人は十数年前すでに病死しており、屋敷も老朽化が進んで、遠目にこそルネッサンス様式の立派な豪邸ではあるけれど、間近に見ると外壁の塗装の剥げたのやら、石柱の風化して欠けたのやらがあちこちに見られ、いかにも過去の栄華を偲(しの)ぶといった風情。

　では、屋根裏に住む女は何者か。

　その疑問を解消する為に、筆者は彼女の人となりと、この屋敷に住まう人々、そして病死した屋敷の主人について、若干の説明を付さねばなるまい。