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「さいでしたなぁ すまへん」
と少し歪まして応えれば
ハイドは声をあげて笑う
その笑い声を聞いてケンは
零れた水を――もう
じゅうたんに染み込みつつあるが―
体を屈まして 拭き始める
「てゆーか、何で割れたん?それ」
床を擦る音が響いてハイドは 尋ねた
「わからん、多分手ぇ当たった」
自分でもよくわからなかった
無意識のまま手が動いたとか?
気付いたら 割れる音が耳に届いてきた
あれ、そういえば自分何でここに?
「なあんか」ハイドが大袈裟に
言うものだからケンは
手を止めて見上げた
「不吉ぅ 気ぃ付けときや 足元」
「なんで足元やねん」 ヤジを飛ばせば
「ハイド様のカン!」
人差し指を立てて笑った。
「でも秋桜かわいそうに」 そのまま
人差し指を落下させて
ケンの手元の秋桜を指さす
ケンはその指に釣られるままに
白く横たわる二輪の花を見つめる
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