《諸刃の剣》

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《諸刃の剣》

《幼い頃から彼女は虐待され、弟は愛されてきた。 食事だって弟にはハンバーグ、彼女には…何もなかった。 ご飯さえまともに食べさせては貰えなかった。 それでも彼女はたった一人の母親だからと、ほんの僅かな可能性を信じて耐えてきたんだ。 そんな二人が大人になり、やがて…弟が死んだ。 自殺だった。 そして母親は彼女に言ったんだ。 『お前が死ねば良かったのに。』》 言葉は諸刃の剣。 人の命を救う事も出来るし、その一撃で命を奪う事も出来る。 病を治す特効薬にも成り得るが、命を奪う凶器にも成り得る。 言葉のナイフを降り下ろす度に、深く、深く、紅い血を流しながら心に傷が付いていく。 深く、深く、突き刺したその刃(やいば)が心の臓を貫く事の無いように。 その手に剣を持たず、心にも剣を持たず。 その手に温もりを持たせ、言葉に思いやりを…。 心に『善きもの』を。
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