8人が本棚に入れています
本棚に追加
《ゆらゆらと》
ゆらゆらと、ゆらゆらと。
紅蓮に染まる川面に漂う。
ゆらゆらと、ゆらゆらと。
それらは生きていたはずだった。
ゆらゆらと、ゆらゆらと。
黒い雨が降りしきる中、
ゆらゆらと、ゆらゆらと。
剥がれた皮膚を引き摺り、痛みも熱さも…神経までもが麻痺していく。
目も眩む閃光と、魂までも吹き飛ばす衝撃波。
飛び散った意識を取り戻した後に、
目の前に拡がる地獄絵図。
様々な『もの』が焼ける臭い。
蠢(うごめ)く『肉の塊』達。
川に、河原に折り重なる屍の山々。
踏みつけて感じる『肉』の感覚
本能のまま、己が生き残る事しか浮かばない。
『助けて、助けて。』
『痛い、痛い。』
『熱い、熱い。』
唸り声の隙間から微かに聞こえてくる『人の言葉』。
どうしたらいいのかわからない。
どこに行けばいいのかわからない。
ここがどこだかわからない。
一瞬にして総てを焼き尽くした。
『街』も、『人』も、『空間』も、そして『時間』さえも焼き尽くしてしまった。
生き延びた人々は未だ苦しんでいる。
彼らの『戦争』はまだ終わってはいない。
最初のコメントを投稿しよう!