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ガタゴト。
―――景色が流れていく。
ガタゴト、ガタゴト。
眠い。
一定の揺れが、俺の睡魔を巧みに誘ってくる。
ガタゴト、ガタゴト。
四角く切り取られた景色が、流れていく。
ガタゴト、ガタゴト。
眠、い。
「あっ、ちょっとちょっと、何一人で後部座席を悠々と占領して寝てんのよ!」
……説明的なセリフをありがとう、妹よ。
ついでに言うと、殴ってくれたおかげで目も覚めた。
「奏、別に起こさなくてもよかったんじゃない?」
「甘いわよ、仁兄(ヒトシニイ)。智兄(トモニイ)は一回寝たら起きないの、よく知ってるでしょ」
助手席に納まった我が妹奏は、運転席の叔父貴に偉そうにそう言った。
「まあ……そうだね」
肯定された。
ちょっとショックだ。
俺はまだ少しぼんやりしている頭を叩き動かして、寝そべっていた後部座席から身体を起こした。
「ん、それでよろしい」
奏は満足そうに微笑むと、顔を前に戻した。
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