小さなサンタクロース

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私、九条一花。17歳! サンタクロース見習い。 「いっちゃ~ん!!!早く早く!!!」 学校の教室の窓から、私を呼ぶ美加。今日も遅刻寸前の私は、閉まりつつあった校門を飛び越えて教室まで一直線。 「もうすぐ先生来ちゃうよ~~!!」 美加の心配そうな声に、私は笑顔を返した。 「いっちゃん笑ってないで早く早く!!」 美加の声で私は校舎に入ると、そのまま2年B組へ駆け込んだ。 「セーフ!!まだ先生来てないよっ」 美加が私の所までホッとしたように来てくれる。美加のボブでパーマをかけたさらさらの髪が揺れた。 「えへへ。今日もラッキー」 私が屈託なく笑うと、横から手が伸びてきて私の頬をつねった。 「こらっ、この遅刻魔!」 「い、いひゃい……いひゃいよ華南ひゃん……」 私がつままれたまま言うと、私の頬をつねっていた華南は手を離して笑った。 「全く、一花はどうしてこうクリスマスの時期になると決まって遅刻するかな。」 華南は腰に手を当てて、横目で私をじろりと睨む。 「えっ、いっちゃん昔からクリスマスは遅刻するの?」 美加が驚いたように聞くと、華南ちゃんは大きく頷いた。 「そうそう。クリスマスになると一花の天然ぶりがパワーアップすんの。遅刻だけじゃなくて、呼んでもぼーっとしてたりとかね、一花」 「あ、あはは……」 私は乾いた笑いで誤魔化した。華南ちゃんは私の幼馴染みで小さい時から、ずっと仲良し。男勝りで頼りがいがあって、いつもぽやぽやしてる私を何かと面倒見てくれる。美加は高校にあがって最初に出来た大切な友達で、とても女の子らしくて憧れてる。心配性なんだけど、しっかりしていて可愛いんだよね。その時、担任の先生が入ってきて、私達は自分の席へと着席した。 先生のHRが始まって、私はまだ眠気が出て小さくあくびした。 私は昔から夢見がちな子だった。童話やおとぎ話はいつも私をどきどきさせて、空想しては楽しんでた。 運命の人とか、赤い糸とか大好きで。いつか王子様が……って考えてしまう子で、そんな私は小さい頃からサンタクロースの存在を信じていた。 クリスマスの日に朝起きるとプレゼントが置いてあって、そのたびにわくわくしてた。 小学生の時はクリスマスはわけもなくどきどきして、眠れなくなるぐらいだったから、毎日遅刻して華南に飽きれられていたっけ……。
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