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そこには、首に金色の鈴をつけたトナカイが二頭、小さな頃から絵本で親しみ続けてきた銀色の大きなそり。
そりの後ろには大きな白い袋が山積みされている。
私は信じられない瞳で目の前の光景を見た。
聖ニコスさんは、少し困ったように微笑んで、
「実はパートナーが風邪をひいてしまいましてね。お嬢さん…プレゼント配るのを手伝って貰えませんか?」
と言った。私は知らないうちに涙が出てきた。感動で涙が出るってこういう事なのかと。
夢にまで見た全てがそこにあって、私は泣きながら頷いていた。
聖ニコスさんは一瞬きょとんとして、その後優しく微笑んで私の頭を撫でてくれた。
その手が温かくて、優しくて、また涙が溢れた。
その涙を拭って、私は聖ニコスさんに抱きつきながら笑った。
「メリークリスマス……サンタクロースさん」
それから、私は聖ニコスさんのそりに乗り、聖ニコスさんはそりを発進させた。そりが浮いて空を飛んだ事は今でも忘れられない。
色々と家を周り、プレゼントが空になる頃にはもう夜明けだった。
聖ニコスさんは、そりをこの街一番の坂の上に止めると大きく伸びをした。
「さ、では頑張ってくれた一花さんにご褒美の時間ですよ」
聖ニコスさんは優しく微笑んで、夜明けの空へ腕をひとふりした。
「うわぁ~~!!!」
私は空を見上げたまま動けなくなってしまった。
空いっぱいに大きな金箔が天の川みたいにきらきら輝き、それは今にも地上へと降り注ぎそうなくらいだった。
ふと私の隣に来た聖ニコスさんが、私に向かって微笑んだ。
「サンタクロースが贈るのは、プレゼントだけじゃない。どれだけの大きな夢を与えられるかですよ」
「サンタさん……」
聖ニコスさんは、私の頭を優しく撫でました。
「さ、もう家に帰る時間ですよ。ご両親と仲直りしてくださいね、一花さん」
「!!!名前……」
言ってなかったのに。
「私たちサンタクロースが子供の名前を知らないわけがないんですよ。夢を持っている一花さんは、もっと希望を持ってくださいね」
私は聖ニコスさんに抱きついた。
「また……来年も会える?」
「もちろん。一花さんが忘れなければ」
私はがばっと顔をあげた。
「忘れないわ!!絶対!!!……私、サンタクロースになる!!!聖ニコスさんみたいな、サンタさんになる!」
「おやおや、小さなサンタクロースさんがここに誕生しましたね」
聖ニコスさんはとても嬉しそうに笑った。
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