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「ご主人様。今日は、用事があるので少しお出かけさせてもらっても良いでしょうか?」
洗面所で、後ろからかけられた声。
「あぁ、俺も友人と会う約束が…っつ!?」
振り返った先にいたのは、どうあっても"メイド"という職業を降りる気は無いらしく…
今日も今日とてメイド街道を驀進中である坂下まひろ16歳。
だが、今日来ていたのはメイド服ではなかった…なかった、が。
激しくフリフリレースなピンク色のワンピースドレス。
ウエストは、リボンで腰の位置を絞ってあり裾はふわふわひらひら。
加えてレースのカチューシャと白のニーソックス。
いや、似合ってるよ。似合ってるんだけど。
「?どうかされましたか?」
激しい頭痛を感じ頭を抑えて俯いた俺の顔を、小首を傾げて覗き込むメイド。
「いや、その服…。」
「!!気付いていただけましたかっ?」
何故ロリータ服?と言おうとしたのだが、メイドの嬉しそうな声が遮る。
「いや、そりゃメイド服でないのは一目瞭然なんだけど。
まさか、もともとそういう服の趣味?」
「いえっ、これは"メイドさんの私服"で、メイド服専門店で購入したものです。」
正しいメイドの普段着なのです、と得意げなメイド(?)
へぇ~、と渇いた笑いを漏らすしかない俺。
「この間、ご主人様のお爺様とお買い物に言った際に選んでもらったのです。」
――って、爺さんの趣味かよ!?
可愛い系の美少女が、コスプレ一歩手前の格好で歩いていたら絶対目立つな。
「もっと地味な服のほうが良いと思うんだが、それを言って素直に着替える性格で無い事はこの数日で十分に解ったからな。」
「ご主人様、それ声に出てますけど。」
あ、声に出してたのか。
メイドに恨めしげに横目で睨まれる。
「いいんです!ご主人様に可愛いと思ってもらえなくても!!
お爺様は可愛いって、似合ってるって言ってくれたんですからっ!!!」
だだだ、と廊下を逆走しバタン!と二階の部屋を閉める音。
・・・拗ねたのか?
どうやら今の独り言を、服が似合わないと思われていると取ったらしい。
ある意味、似合いすぎて怖いとは思ってるぞ?
とりあえず、ご機嫌斜めなメイドは放置の方向で。
「戸締り忘れないようにな。」
階段下から声をかけて出かけることにした。
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