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―ぼくはいま、おとうさんとおかあさんといっしょに、くるまにのっているんだ。
きょうは、かぞくでおでかけするんだって。
「おかあさん、どこに行くの?」
―どこにつれていってくれるのかな。
「利斗(りと)。今日はおじいちゃんの家に行くのよ。」
「おじいちゃん?」
―ぼくにはおじいちゃんはいないんだって、そういっていたのに?
「そう、お父さんのお父さん。利斗は会うの初めてだよね。」
―おじいちゃんがいるってわかってうれしい。
ぼくには、おとうさんとおかあさんしかいなかったから。
「全く、息子の俺を勘当してるくせに孫がいるとわかった途端”会わせろ”なんて連絡よこすとは。相変わらずの暴君だな。」
―かんどう?かんどうってなんだろう。
「あなた、10年ぶりに会うというのに喧嘩しないで下さいね。」
―おとうさんとおじいちゃんは、なかがわるいの?
「お前のことを悪く言われるのは許せん。」
「全く・・・。」
―おかあさん、こまったかおをしてるけどちょっとうれしそうだ。
暖かな光に包まれて、うつらうつらとしたその時、
「うわっ、危ない!?」
「きゃあぁ!!」
突然の父親の声。
急ブレーキの音が響き渡った、瞬間。抱きしめられる暖かい腕に力がこもった、瞬間。
グシャリ!という鈍い音と共に、体が宙に浮く感覚と物凄い衝撃。
―おとうさん、おかあさん。からだがいたいよ。。。
ぎしりと体がきしむ感覚に耐え切れず、視界は暗転した。
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