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暖かく柔らかな感触に包まれている。
安心する、あの懐かしい感覚。
「母さん・・・。」
温もりをもっと感じたくて、無意識に傍らに感じる温かい体に腕をまわす。
かつて抱きしめて安心させてくれた母とは違う甘い香りが、鼻腔をくすぐる。
・・・・・・・・・ん?母とは違う甘い香り?
そこで、俺の意識は一気に覚醒した。
かっ、と目を見開いた俺の視界いっぱいに広がったのは、ふわふわの栗色の猫っ毛。
おそらく、少女の頭部であろうと思われるモノ。
規則正しいく聞こえる寝息。
背中にしっかりとまわしている自分の腕と、絡めた足。
体全体で知覚している、柔らかな感触と暖かさ。
それはつまり、………どういうことだ?
チッチッチッ、チーン。
状況認識完了。
「・・・・・・・・・っだあぁあぁあ!?」
ドスン! ガン!!
ちなみに前がベッドから落ちた音で、
後のが物凄い勢いで後ずさった為壁に背中を打ちつけた音。
「・・・ん?ご主人様?」
寝ぼけまなこで、もぞもぞと布団から体を起こすメイド衣装を身に着けた少女。
「おはようございます、大丈夫ですか?凄い音が聞こえたような・・・。」
鈴を振ったような、愛らしい声。
パッチリとした両目に柔らかそうな唇、ぬけるような白い肌。
長い栗色の髪がふわりと肩にかかっている。
ありきたりな言葉で表現するなら、”とびきりの美少女”だ。
これに尽きる。
テレビに良く出ている、可愛いと評番の
アイドル歌手なんかよりずっと整った顔立ちをしている、と思う。
あくまで、一般論だが。
「で、なんでメイド服の美少女が、俺のベッドの上にいるんだ?」
怒りを表せるよう声色に低音をきかせてみる。
もっとも、壁を背にしりもちをついた格好では凄みも何も無いかもしれないが。
「あっ、すいません。メイドのお仕事の一環として、ご主人様を起こしにきたんですけど。
気持ちよさそうに寝てるご主人様をみると、つられて眠気が・・・。」
私、朝弱いんですよ、てへと笑う美少女。
いや待て、それは何か違うだろう。
そう突っ込を入れようとして、気付いた。お仕事?メイド?そうだ、そういえば昨日。。。
無意識に記憶から削除していた出来事を思い出す。
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