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さて、それはさて置き、私の両親は、この小瀬良の「拓きの者」の中で生まれた。父の親、私の祖父の茂吉も多くの子供を抱え、辛苦の一生を終えた人のようで、そのため父は幼少の間を平戸の兄の家や、上五島の仲知のカトリック教会で育てられている。私達が生まれたときには、父方の祖父母はすでにこの世にはいなかった。
父は両親に早く亡くなられ、わずか十四歳で家を継がされた。父は、男五人、女五人の十人兄弟の末子だったが、すでに兄達は分家し、姉達は嫁いでいて、末子が後を継ぐこの地方の習慣に従い、親の後を引き受けねばならなかったが、如何にしても十四歳の子供が百姓の一家を一人で支えて行くことは無理であった。
それで兄達のはからいで、すぐ上の兄の息子である石作氏と二人で一家を立ててゆくことになった。父はこの八歳年下の石作氏と力を合わせて一生懸命働いた。それは実に涙ぐましい二人の姿であったろう。
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