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船越という所は佐世保の旧市内より西方に位置して、地元では愛宕山と呼んでいる山があるが、正確には赤崎岳というのであろう。佐世保港の西方にムックリとらくだの瘤(こぶ)のように従えて、この山並みでは一番高い山だが、標高二百五十メートル程度だろうか、この赤崎岳の北西が船越で、九十九島を眼下に、遠く平戸島・五島列島を望見する誠に眺めのよい所である。
第二次世界大戦が終わるまで軍港要地として永い間黒いベールに包まれ、世間には知られていなかったこの景勝地も、終戦と共に明るみに出て、いち早く九十九島が国立公園に指定され、今ではこの船越の石岳に植物園ができて佐世保の唯一の観光地となっているが、私が生まれた所は丁度この植物園の玄関口に当たる所である。
今でこそ大きなバス通りも出来て観光客で賑やかなこの地も、四十年前の私が生まれた頃は、想像もつかない程の山深い所であった。後年、叔母やいとこ達の住むこの地に、小学校時代の冬休みをよく遊びに来ていたが、その頃でも相当な山の中であった。
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