五島から佐世保へ

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仕事は純請負制度で岸壁から船に二本の橋が渡してあり、行き帰りの橋である。帰りの橋のたもとに海軍の石炭積込を請負っている会社の人夫監督が立っていて、一枚ずつ札を渡す。一日の仕事が終えてその札が現金に換えられる訳た 。このゴンゾウが渡る橋こそ文字通り社会の底辺をあゆむ、あゆみ板にちがいなかった。橋といっても幅五0センチの手すりも何もない一枚板だ。 担ぐ篭の大きさも二通りあって、力のある者は大きい篭で担い、弱い者は小さな篭で担いだ。札も大きい篭と小さい篭とでは勿論金額が違っていた。この様な仕組みになっていたので、自分に合った篭で担ぎたいだけ担げばよかった。辛抱強い者は一日中コツコツと担い、休憩する者は自由に休み、仁王のような体格をしていながら小さい篭で担いだり、小さいくせに欲張って大きな篭で担ぐ者もいたり自由であった。
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