五島から佐世保へ

45/48
前へ
/483ページ
次へ
父はキャシャな体で余り体格に恵まれていなかったので小さい篭を担いだ。人吉さんと仁三さんは大きな篭で担いだそうだが、面白いことには持って帰る金は、たいてい父の方が多かったとのことである。 父は辛抱強く小さい篭で黙々と運んだが、人吉さんときたらプロレスでもやりそうな体格の持主で、やるときにはワーワー云いながら馬力をかけて走り回り、馬力が尽きれば篭をほうり投げて休憩している女達のところへ行って、ひっくり返りワーワーと騒いで皆を笑わせるといったようなことを繰り返していたらしい。大変滑稽(こっけい)な人であったから、そのときの様子は私にも容易に想像がつく。
/483ページ

最初のコメントを投稿しよう!

925人が本棚に入れています
本棚に追加