五島から佐世保へ

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男達ばかりではなく母達も家事のあいまをみてはゴンゾウをしたそうだ。女のゴンゾウもたくさんいたとのこと。初めの頃、母は船に掛けたあゆみ板を渡るのが恐くて、たまらなかったそうだ。恐そうにして渡っていれば、男達がわざと板をゆすって面白がっていたという。母が仕事しているときは赤ん坊の私は多分石炭の山の片隅に寝転がされていたのであろう。 さて、このような船越での生活であったが、これでは勿論父は満足しなかった。将来子供達のことを考えると、も少し人間らしい生活をと思ったのである。サラリーマンをと願った。 サラリーマンになるには地主との契約もあってここには居られない。だが将来のことを考えると、このまま埋もれたくなかった。父は決心して地主には内緒でサラリーマンの口をさがした。
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