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未だ微かに痛む腹部を見れば黒色の学生服は血で紅く染まっている。
「っぐ!……っぅ」
「おいおい、もう痛くねぇはずだろ? いつまでやってんだ」
血塗られた腹部を擦れば確かに男の言葉通り痛みは既に感じなかった。
「まさか……いき、てる?」
「いいや」
誠司の唯一の希望を即座にかき消す通告。思わず男を見るが、やはり目深に被ったフェルトハットで表情は窺えないまま。
「正確にはお前は死んでる。そこにいる中年オヤジに殺されたのは事実だ」
絶たれた。信じられない事を告げられたはず。それなのに何故か受け入れなければいけない、そう……誠司の思考は理解していた。
本人の意思とは無関係に自分は死人だと。
「貴方は、いったい……?」
男は答えた。自身の存在を、端的だか明瞭で正確な答えで。
「死神」
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