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「じゃあ、僕はやっぱり……」
項垂れながらに気付く。先程まで自分が歩いていた人込みは刻が止まったように動かず、音もしない無の世界にいる事に。
「おい、時間が無い……お前には選択肢が二つある。一つはこのまま墓に入るか、それとも」
突然の問い掛けに誠司が顔を上げれば、男の口元は微かに微笑んでいた。
「俺と契約し、生きるか。どちらかだ」
「ーっ! ちょっと待て、さっき僕は死んだって」
身体も意識も既に完全に取り戻した誠司は矛盾する問い掛けに反抗する。
と、彼の反問が言い終わらぬ内に、手に血塗られた刃物を持つ男の身体が微かに動き始めた。
「ーっち!……時間が無い。さぁ、どうする?」
徐々に動き始める刻と殺人犯。刻々と迫る決断の時。
この死神と契約を結ばなければ十六歳にして死を迎える事になる。
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