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僕の夢には色がない
僕の夢には形もない。
僕の夢にあるのは、ただ肌にまとわりつく感覚―それもかなり濃厚なーのようなものと
そのときのたまらない感情だけ。そんな夢をみるのは、どうやら周囲では僕だけらしいということに、僕はかなり幼い頃から気がついていた。
だから僕は誰にも話さなかった。
親にも友達にも誰にも。
話したら、バレたら、終わりだ。
そんな気がして黙ってた。
「昨日さーこんな夢みちゃったよ、」とか
偶然友達同士で夢の話になったりするときは
いつも「へぇ~、そうなんだ。」とにこにこしているだけにした。
時たま、「オマエは?」とかハナシを振られたら、「
「夢ねぇ、覚えてられないんだよ。起きたら忘れてるんだ。」
と答えることにした。
すると、みんなは「バッカだなぁ、」というように明るく笑う。
僕も一緒に明るく笑う。
気持ち悪がられるより、マヌケなほうがずっといい。
だから 僕は夢の話を誰にもしなかった。
れでも僕は“夢の話”は大好きだった。
“・・・それは夢だった”な話も大好きで、友達の話も嬉しかったし、
絵本でも小説でも漫画でも“夢の話“を扱うものが大好きで
幾つも幾つも探し当てては見つけ次第、それこそ”貪るように”読んだ。
いいなぁ、いいなぁ、こんな夢が見れたらいいなぁ。
いつもいつもそう思った。
読んだ“夢の話”を繋ぎ合わせて、“見た”ことにしようかしらと、
何度か思ったことはあるけれど、やっぱり
「夢、覚えられない」と答えてた。 小学校の6年生のとき、卒業文集に載せるからと
「ボクの夢」という作文をかけ、といわれ、僕は“立ち尽くして”しまった。
(実際は席に座っていたんだけど。)
題名は「夢」だけども「将来の希望」のようなものを書け、
といわれてるのは、その頃の自分でもわかっていた。
けれども僕には書けなかった。
僕の見る夢が僕の将来そのもののような気がしてしまったからだ。
足の指先からドロドロした冷やっこいものが這い上がってきて
僕の体中を覆いつくし、僕はその場に凍りついていた。
書かない(本当は書けないのだけども)僕に、先生はとても驚いたようだった。
僕は自分に無理する事無くおとなしくマジメな生徒だったから。
先生は優しく、とても優しく
「なんでもいいんだよ?」と繰り返していた。
だけど僕はやっぱり書けなかった。
だから 卒業文集に僕の作文は載っていない。
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