僕の見る夢

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一度だけ、“見たことの無い夢”をみたことがある。  それは 僕がまだ大学生の頃で、2月だった。  その夢にはやっぱり形は無かったけれど色があった。  オレンジのようなピンクのようなほんわりとした色の光の中に、 僕は居るらしかった。  いつもの僕の夢のようにたまらない圧迫感や、 訳のわからない焦燥感なんかは全然無かった。 ほんわりとただほんわりと温かい光の丸の中に僕は居るようだった。  孵卵器の中の卵はこんな景色を見てるのかなぁ、とか思ってた。なんとか自分の指先くらい見えないかしらとあがいてると、目が覚めてしまった。  その朝、僕の隣には女の子が眠っていた。 その子は同じ大学で2つ下だった。 女の子とはじめて過ごした夜が明けた朝だった。  その子はとても気持ちよさそうに眠ってた。 ひょっとしたら今が夢の中なのかしらと、僕はぼんやり眺めていた。 けれどそれは夢ではなくて、色も形もあり、手で触れることもできる現実だった。  女の子は眩しかったのか鬱陶しかったのか、ちょっと眉をひそめて向こうを向いた。  このひとが僕の夢なのかもしれない。 僕はそう思った。   それが僕の大きな間違いだった。 今ならわかる。
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