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1943年7月25日、オットー・スコルツェニィはベルリンのホテル・エデンで、コニャックの入ったグラスを傾けながら、気の許せる友人達と、気楽な談笑のひと時を楽しんでいた。
彼は同年の4月に新設された、ドイツ初の特殊部隊…
<フリーデンターラー・ヤークトフェルベンデ>の隊長に就任しており…
彼に取ってこの7月25日という日は、久しぶりの休日であった。
そして…スコルツェニィは。
「休日くらいは戦争の事は忘れたい」
そう思っていた。
しかし…部隊への定時連絡だけはしなければならない事だけは覚えていた。
『すまない、ちょっと電話をしてくる。部隊への定時連絡だから直ぐに戻るよ。』
スコルツェニィは友人達に、そう言って席を立ち…
ホテルの電話室に足を運んだ。
電話はしばらくして繋がった。
『スコルツェニィだが、今ベルリ…』
電話に出た女性秘書が、ヒステリックに彼に噛み付いてきた。
『隊長!今いったいどちらにおられるのですか?
もう二時間も前から基地全体で、スコルツェニィ隊長を捜していたのですよ!』
女性秘書のただならぬ剣幕に驚いたスコルツェニィは…
『いったい何があったのだ?少し落ち着いて話してくれ』
…と、尋ねた。
女性秘書は金切り声を張り上げた。
『隊長!!総統大本営では貴方を待っているのです!!
飛行機が午後5時に貴方を乗せて離陸しようと…テンペルホーフ飛行場で待機中です!』
スコルツェニィの休日気分は一気に吹っ飛んだ。
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