第四章…ワルキューレは降りず

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1944年7月20日… その日の朝、スコルツェニィは久しぶりの休日を、自宅で家族達と過ごしていた。 戦局は悪化の一途を辿っていたが… 彼はヒトラーの統率力に、なんら疑問を抱いていなかった。 もっと穿った言い方をするなら… 彼自身は戦場で死んでも、悔いはないとも…思っていたようだ。 この死に対する想いは…日本の葉隠れ武士と共通した感覚でもあった。 なので、彼は生を楽しむ事にもいつも一生懸命であった。 この日、彼の熱意は…いつもほったらかしにしている、妻と子供達に向けられていた。 なので…その日のスコルツェニィ邸は、戦場の慌ただしさや…緊迫し悪化した戦局が、まるで嘘の様な…暖かい空気に包まれていた。 だが…そんな平和な時間も… その日の午後3時にかかってきた… たった一本の電話により、絶たれる事となった。
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