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市内の大学生をしているヒロは、国公立で最低ランクと言われる学校にも関わらず、早くも留年の危機に面していた。
『まず入る科がダメだった。』
数少ない友達である充(ミツル)に愚痴をこぼした。
『そう?』
『お前んとこはいいよ。俺電機科だぞ?どう思う?毎日毎日計算ばっか!』
『電機科はね…うん、可哀相だと思うよ。』
『お前は?』
『え?』
『どうなの?また2年生やるの?』
『さぁ…別に出席日数足りてるし、あんま落としてないから、大丈夫だとは思うけどねぇ…』
『ふーん。あああああ面倒くさい!』
ヒロと充は地方から出てきた「脱落組」だった。
お世辞にもレベルが高いとは言えないこの大学でとりあえず入学出来る程度のランク。
ヒロは仙台、充は札幌から出てきた。
同じバイト先で出会った二人の共通点は、
「男・同じ大学・頭が悪い」だった。
とりあえず高校出て真面目に働くのが嫌で嫌でしょうがなかったヒロは、
共働きでそれほど貧乏ではない親の援助と、高校時代貯めたバイトの資金でここまで来た。
いつかの同じシフトの時に充に聞いた気がする。
『なんでここに来たの?』
『頭悪いし、別にあそこに居ても意味ない』
吐き捨てるように言った。
充のことをまだよく分かっていなかったヒロは、柄にもないその言葉に、驚いた。
『意味ない?』
『うん。俺さ、なんていうか、恥ずかしいんだけど…』
『へ?』
『んーいやぁ、まぁ。いいじゃん』
『……そか』
その後は元の充に戻ったから、ヒロは気にしなかった。
充の手首に沢山の傷痕が残っているのを見るまでは。
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