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今も大学の学食で、ヒロと話ながら充は手首をぼりぼり掻いていた。
『充、やめろって』
『あーごめん。』
『痒いの?痛いの?』
『うん、なんかね、むずむずするんだ。』
『…そっか。』
何で傷付けたか分からないが、充の手首を見ると、ぶるっと寒気がした。爪で黒板を引っかくような、じたばたしたくなるような感覚。
その傷の意志の固さ、
充の刃物を持つ強さが、一目でわかった。
生半可なものじゃない。女子高生がやるリストカットとはまた違うものがあった。
『痛かった?』
しまったとは思ったが聞いてしまった。
『いや、その時はね、生きてる事が痛かったんだ。だから、頭いかれてて、なんも感じなかった。』
『…………』
『今考えたら、すごく痛い。』
『………………うん。』
『死にたいとかじゃないんだ。本当現実逃避。俺は死ぬ勇気も無ければ、生きる勇気も無いから、ただ心の辛さを、切ることでしか消化できなかった。』
『………うん』
自分で聞いといて気の利いた返事も出来なかった。
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