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夜の街島原。
「音霧(オトギリ)を指名していいかな?」
島原の一角、実津屋(ミツヤ)。
柔和な顔をした男が指名をした。
女将は慣れた所作で奥へと案内する。
音霧を指名する客の目的は決まっている。
案内された部屋へと入る。
その中には黒の着物を着こんだ女が煙管を咥えて窓枠に座っていた。後ろを向いているため顔立ちは見えない
「闇音」
これは合言葉のようなもの。
異名でもあるのだが、依頼の際の合言葉でもある。
「お前初めての客だな」
依頼の数はごまんとある中覚えているのかと問いたい
「クスクス…
うん、初めてだよ」
「依頼は何だ。
暗殺か、偵察か、情報か、」
早くしろ、と言うように舌うちをする。
「んー。君、かな?
僕ら君が欲しいんだよねえ…」
「断る」
依頼がないのなら帰れ。
そう言うと依頼ならある、とさっきとは違うことを言われる。
「そうだね…殺してきてくれる?人はこの紙に書いておいたから。」
ニコッと男は笑うが女は背を向けたままなので見ていないだろう。
「わかった。明後日までにやっておく」
わかったらさっさと出ていけ。
そう言うとぐちぐちと言いながらも出て行った。
その背中を窓から見る女…
その眼に映るは闇のみ。
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