25人が本棚に入れています
本棚に追加
/215ページ
<やられた…!>
<相変わらずムチャクチャっすよ隊チョー>
隊長と呼ばれた青年は、パイロットスーツのヘルメットの下でニヤリと笑う。
と、隊長機のコクピットに通信が入る。
モニターがあるわけではない虚空に、ビジョンが浮かび上がる。
<こちら本部。訓練終了、帰還してください>
通信は、女性オペレーターのものだった。
肩で揃えた金髪に眼鏡をかけた、一見して真面目そうな女性だ。
「了解した」
<お疲れ様です、ゼロ大尉>
「ああ。ありがとう」
不敵に笑う青年、ゼロ。
20歳という若さで、小隊の隊長を務めている火星軍のエースパイロットだ。
火星軍とは言っても戦争を前提とした組織、というよりもその活動内容は大災害による被害を食い止めたり、逃げ送れ取り残された人々の救出などが主な任務だった。
ゼロはその操縦技術もさることながら、こういった活動にも積極的で、災害が起これば常に功績を残していたのである。
ゼロは他の2機に通信を入れる。
「ナイトリーダーより各機へ。訓練終了、帰還するぞ」
<ナイト1(ロイ)、了解!>
<ナイト2(ライアン)了~解!>
視界の右と左に、部下2人、ロイとライアンの映像が入る。
人型から、戦闘機形態に変形し、飛び退る三機。
ピーッ
「!」
突然、ゼロ機のコクピット内に警告音が鳴り響く。
ゼロは計器を操作し、警告音の原因を突き止める。
「機体コンディション、レッド…」
右方向のモニターに映るゼロ機の立体映像は、6~7割が赤くなっていた。
<またッスか隊チョー…>
<隊長の操縦に、R-9じゃついていけないんでしょうね>
呆れ気味に呟く部下2人。
彼等の乗る機体の名前はR-9(アールナイン)。
可変機構をもつ、火星軍の最新鋭戦闘機である。
最新鋭機のはずなのだが…。
「いつものくせが出てしまうんだよな…気をつけてはいるのだけれど」
彼の功績は素晴らしいものだったが、彼にも欠点があった。
訓練、出撃の度に搭乗機を、最悪廃棄処分にまで追い込んでしまうことだった。
部下達の攻撃を全てかわし、攻撃を加えていたこと。
さらには先ほどの落下から変形、変形中の急上昇等の無茶をしたために、
彼の機体は限界を超えてしまったのだ。
そんな彼に、新たな通信が入る。
最初のコメントを投稿しよう!