第1話

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<やられた…!> <相変わらずムチャクチャっすよ隊チョー> 隊長と呼ばれた青年は、パイロットスーツのヘルメットの下でニヤリと笑う。 と、隊長機のコクピットに通信が入る。 モニターがあるわけではない虚空に、ビジョンが浮かび上がる。 <こちら本部。訓練終了、帰還してください> 通信は、女性オペレーターのものだった。 肩で揃えた金髪に眼鏡をかけた、一見して真面目そうな女性だ。 「了解した」 <お疲れ様です、ゼロ大尉> 「ああ。ありがとう」 不敵に笑う青年、ゼロ。 20歳という若さで、小隊の隊長を務めている火星軍のエースパイロットだ。 火星軍とは言っても戦争を前提とした組織、というよりもその活動内容は大災害による被害を食い止めたり、逃げ送れ取り残された人々の救出などが主な任務だった。 ゼロはその操縦技術もさることながら、こういった活動にも積極的で、災害が起これば常に功績を残していたのである。 ゼロは他の2機に通信を入れる。 「ナイトリーダーより各機へ。訓練終了、帰還するぞ」 <ナイト1(ロイ)、了解!> <ナイト2(ライアン)了~解!> 視界の右と左に、部下2人、ロイとライアンの映像が入る。 人型から、戦闘機形態に変形し、飛び退る三機。 ピーッ 「!」 突然、ゼロ機のコクピット内に警告音が鳴り響く。 ゼロは計器を操作し、警告音の原因を突き止める。 「機体コンディション、レッド…」 右方向のモニターに映るゼロ機の立体映像は、6~7割が赤くなっていた。 <またッスか隊チョー…> <隊長の操縦に、R-9じゃついていけないんでしょうね> 呆れ気味に呟く部下2人。 彼等の乗る機体の名前はR-9(アールナイン)。 可変機構をもつ、火星軍の最新鋭戦闘機である。 最新鋭機のはずなのだが…。 「いつものくせが出てしまうんだよな…気をつけてはいるのだけれど」 彼の功績は素晴らしいものだったが、彼にも欠点があった。 訓練、出撃の度に搭乗機を、最悪廃棄処分にまで追い込んでしまうことだった。 部下達の攻撃を全てかわし、攻撃を加えていたこと。 さらには先ほどの落下から変形、変形中の急上昇等の無茶をしたために、 彼の機体は限界を超えてしまったのだ。 そんな彼に、新たな通信が入る。
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