第1話

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<ゼロッ!早く帰ってきてよ!!明日の為の最終調整、残ってんだからね!!> 「うわ!?」 さらに、虚空にビジョンが浮かび上がる。 ノイズが走っていてその姿をうかがうことは出来ない。 だが、先ほどのオペレーターとは明らかに違う、元気にあふれた声が流れる。 ゼロには、その声に心当たりがあった。 「ミズキ…何度も言ってるだろう!軍用回線をハッキングするのはやめろって!」 ふう、と盛大にため息を吐きながら言うゼロ。 ノイズが走っているのは、ハッキングによる通信だかららしい。 「エル伍長、軍用回線の書き換えはしておいたのか?」 ゼロの言葉に、先ほどの女性オペレーター、エルが答える。 <は、はぁ…そのはずなんですが> <にっひっひ…あれじゃあ隠してる内に入らないよ~だ> 悪戯子悪魔のごとく、にっしっしと笑うミズキ。 それもいつもの事だった。 エルも優秀なオペレーターだ。 仕事を頼まれて途中で投げ出したままにするはずも無いし、適当な仕事をするはずも無いのだが、 だがゼロはつい、そう聞きたくなってしまうような心境だった。 <まあ~いいんじゃな~い?戦時中じゃああるまいし~?> 「ダイアス准将!!准将がそんな事でどうするんですか!!」 通信に割り込んできたのは、火星軍西方面指揮官、ゼロ達の上官であるダイアスだった。 立派な白ひげを蓄えた、人のよさそうな老人だ。 <准将~!『明日の件』ありがとうございます!> <はっはっは、何、ほかならぬ君の頼みだからねえ> ハッキングを仕掛けてきている少女に対して、ダイアスは怒りなど微塵にも感じていないらしい。 <准将。鼻の下が伸びておられますよ> <…ウオッホン。まあ『君らが造った機体』というのも非常に興味深い事だしな> <そちらがついで、みたいな口調ですね> <エル君、今日はいつになく厳しいツッコミだね> 「…」 ゼロは先ほどよりも、更に大きくため息をついた。 准将は普段から、あの砕けた態度を崩した試しがない。 タメ口に近いゼロ達の言葉にも、何ら注意されることはないのだった。 とはいえ、彼が今の地位を築いたのは事実であり、彼の事を誰もが一目置いているのは間違いなかった。
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