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<明日といえば、隊長達が造った機体のテストでしたっけ?>
「そうだ」
ロイの言葉に苦笑を浮かべて答えるゼロ。
<俺、今からワクワクしてるんスよ!>
明日は、ゼロとミズキが造ったある機体のテストが、火星軍西方面基地で行われる事になったのだ。
<古い機体の処分にも困っていたし、存分に使ってくれい>
軍の旧式の機体や中破した機体(ゼロが原因なものが8割)や、AIの暴走によって破壊活動を起こした機体を回収、
処分寸前だった物にAIをつんで自動操縦し、それを的に実弾テストを行う予定なのだ。
「それはいいんですが…そろそろ通信を切ります」
<大尉?どうしました?>
「そろそろ操縦に専念しないと、やばそうなんでね」
エルの言葉に苦笑を浮かべて答えるゼロ。
<ゼロ、またやっちゃったの!?>
「つ、ついな」
呆れたように言うミズキの言葉に、ゼロはこめかみに汗をかきつつそう答えるしかなかった。
<ほら准将~、あたし達の機体をゼロの専用機として軍で採用しな~い?>
<むうう、しかし最近本部が予算ケチっちゃってねえ。結構厳しいのよ>
<このままゼロが次々機体壊すよりも、ずっと安上がりだと思うよ~?>
<なるほど、それはおいしそうな話ではあるなあ>
「…切ります」
ぴっ
通信を切るゼロ。
かなり耳の痛い話だった。
だが気を抜けば墜落しそうだというのは、紛れもなく事実である。
基地に向かってしっかりと操縦桿を握り、飛翔するゼロだった。
「やれやれ」
無事に基地に帰りつき、そのままミズキの待つシティのはずれにある工場を訪れたゼロ。
白いジャケットに、黒い細身のパンツという出で立ちだ。
頭髪はかなりのストレートヘアで、髪が重力に逆らい、ツンと上を向いていた。
「明日がいよいよお披露目、か」
彼の目の前には、全身を白でカラーリングされた、一機の戦闘機がある。
「やっと来た」
工場の奥から、ミズキの声がした。
薄汚れた作業服――つなぎを着て、頭にはつばを後に向けた帽子。
帽子の下からは、少量の頭髪が見える。
彼女の髪は「作業には邪魔だ」と、いつもショートカットだった。
活発な彼女には、それがまたひどく似合っていたりする。
「柄にもなく、感傷に浸っちまうよ」
「長かったもんね…」
「ああ」
2人は戦闘機を見上げる。
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