第1話

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<明日といえば、隊長達が造った機体のテストでしたっけ?> 「そうだ」 ロイの言葉に苦笑を浮かべて答えるゼロ。 <俺、今からワクワクしてるんスよ!> 明日は、ゼロとミズキが造ったある機体のテストが、火星軍西方面基地で行われる事になったのだ。 <古い機体の処分にも困っていたし、存分に使ってくれい> 軍の旧式の機体や中破した機体(ゼロが原因なものが8割)や、AIの暴走によって破壊活動を起こした機体を回収、 処分寸前だった物にAIをつんで自動操縦し、それを的に実弾テストを行う予定なのだ。 「それはいいんですが…そろそろ通信を切ります」 <大尉?どうしました?> 「そろそろ操縦に専念しないと、やばそうなんでね」 エルの言葉に苦笑を浮かべて答えるゼロ。 <ゼロ、またやっちゃったの!?> 「つ、ついな」 呆れたように言うミズキの言葉に、ゼロはこめかみに汗をかきつつそう答えるしかなかった。 <ほら准将~、あたし達の機体をゼロの専用機として軍で採用しな~い?> <むうう、しかし最近本部が予算ケチっちゃってねえ。結構厳しいのよ> <このままゼロが次々機体壊すよりも、ずっと安上がりだと思うよ~?> <なるほど、それはおいしそうな話ではあるなあ> 「…切ります」 ぴっ 通信を切るゼロ。 かなり耳の痛い話だった。 だが気を抜けば墜落しそうだというのは、紛れもなく事実である。 基地に向かってしっかりと操縦桿を握り、飛翔するゼロだった。 「やれやれ」 無事に基地に帰りつき、そのままミズキの待つシティのはずれにある工場を訪れたゼロ。 白いジャケットに、黒い細身のパンツという出で立ちだ。 頭髪はかなりのストレートヘアで、髪が重力に逆らい、ツンと上を向いていた。 「明日がいよいよお披露目、か」 彼の目の前には、全身を白でカラーリングされた、一機の戦闘機がある。 「やっと来た」 工場の奥から、ミズキの声がした。 薄汚れた作業服――つなぎを着て、頭にはつばを後に向けた帽子。 帽子の下からは、少量の頭髪が見える。 彼女の髪は「作業には邪魔だ」と、いつもショートカットだった。 活発な彼女には、それがまたひどく似合っていたりする。 「柄にもなく、感傷に浸っちまうよ」 「長かったもんね…」 「ああ」 2人は戦闘機を見上げる。
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