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「荒野で…この機体を見つけたのが始まりだったね」
「ああ」
荒野の真ん中で光を発していたのは、ボロボロの戦闘機だった。
当時荒野で発見した時点では、武装は弾切れ、塗装は落ち、装甲はボロボロ。
とても活動できる状態ではなかったのだが、2人はこの戦闘機をいつの日か修理し、
飛ばすことを決意した。
なぜ大人たちは誰もこの機体に気がつかなかったのか。
行動不能なこの機体には見向きもしなかっただけなのだろうか?
それとも本当にこの機体に気がつかなかっただけなのだろうか?
だが当時の2人にとって、そんな事はどうでもよかった。
なぜかこの機体を見た瞬間、大空へと飛ばしてあげたい、修理してあげたいという気持ちに捕らわれていたのだ。
「俺が最高のパイロット」
「私が最高のメカニックになって、ね」
どちらともなく、笑いあう二人。
「さて、最終調整さっさと済ませて、今日は早々に寝るとしようか」
「うん!」
彼等が見つけたこの機体は少し特殊で、機首ではなく、ボディの中ほどにコクピットがあるのだ。
コクピットから伸びるパイプに、シートが固定されている。
シートに腰掛け、シート側面のボタンを押すゼロ。
と、パイプが伸縮しシートがコクピット内に収容されていく。
コクピットにシートが固定されると同時に、外にいるミズキから通信が入る。
モニターに移るミズキは、とても生き生きしていた。
<ちゃっちゃかやっちゃおっ!私は『あっち』の調整しちゃうから!>
「了解した」
そして彼等は、明日の為の最終調整を始めた。
嬉々とした表情で。
次の日。
火星軍西方面基地、演習場。
その片隅に、白いボディーの戦闘機が止まっている。
その周りには、10数機の機体。皆傅き、瞳に光が灯っていない。
<では、ゼロ大尉。無人機の訓練攻撃用AI、起動します。よろしいですか?>
「いつでもどうぞ」
ビジョンからのエルの質問に、計器をチェックしながら答えるゼロ。
<了解。攻撃用AI、起動します>
ヴン
瞳に光が灯る人型兵器。
大戦の忌まわしき忘れ形見、イレイザーだった。
ブースターをふかし、地上を滑るように走り抜けるイレイザー。
その数全5機。
さすがに飛び立っていない戦闘機を攻撃するようなプログラムはしていない。
旋回しつつ、戦闘機を警戒している。
レーダーでそれを確認するゼロ。
グリップを握る手に、力がはいる。
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