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「…」
今日まで自分がやってきたことは、すべて今日この日のため。
決して自分の期待を裏切るような結果にはならないだろう。
そこまで、自分を高めてきた。
武術を修めたりもしたし、筋力トレーニングを欠かしたこともない。
AI如きに遅れをとるようなことは、断じてない。
グリップを握る手を、閉じたり開いたりする。
<あ、またそれやってるね>
ビジョンに映るミズキが、ゼロの手を見つめて苦笑する。
「昔からのくせだからね。出撃前にも、気が付けばいつもやっている」
ゼロもまた、苦笑でミズキに返す。
<大抵不安な時とかにそれやるよね。初めて飛んだときとか。
だいじょーぶ!ぜえったいうまくいくってば!天才パイロットさん♪>
苦笑し、頷くゼロ。
目を瞑り、深呼吸。
深く深く息を吐き出し、そして一気に息を吸い、体の中に留める。
力強くグリップを握り締める。
「行くぞ!!ゼロ・ファイター発進ッッ!!!!」
グリップを押し込み、弾かれるように空に向かって発進する白い戦闘機、『ゼロ・ファイター』。
すぐさまそれを攻撃目標に認定するイレイザー。
手に持つマシンガンをゼロ・ファイターに向かって乱射する。
それらを巧みにかわすゼロ。
「もらったっ!!」
イレイザーの背後を取ると、翼についている機銃を発射するゼロ。
見事に背後を打ち抜かれ、沈黙するイレイザー。
「たいした運動性だね」
ふむ、と顎下に伸びる白ひげをさすりつつ言うダイアス。
その眼つきは、いつもの柔和な眼つきではなかった。
戦闘を指揮する、一将校。そんな感じだった。
「まだまだこれからッス!」
そんなダイアスに向かって、ミズキは意味深げな含み笑いを漏らした。
<ミズキ!!フレームコール!!ライガー・フレームスタンバイッ!>
「了解ッと♪」
ゼロからの通信が入る。
待ってましたとばかりに、今回ミズキ用に用意されたコンソールを、目にもとまらぬ早さで操作するミズキ。
「フレーム選択…『ライガー』!射出ッ!!」
ミズキの操作により、傅いていた人型機体の内の一機が背面ブースターを点火、ゼロの戦闘機に向かって猛然と接近していく。
ゼロは機体を旋回させ、動き出した無人人型機に近づいていく。
無人機の真後ろにゼロ・ファイターを接近させるゼロ。
無人機『ライガー・フレーム』の胸部には、ぽっかりと空洞が空いている。
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