序章

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いつもの様に、5歳になる一人娘の涼花を幼稚園バスへ乗せ、見送った後自宅マンションへ戻った。 自宅は、32歳の夫と娘3人暮らしには十分な広さの3LDKで川の側に建つ高層マンションだ。 普段あまり使わない一室から携帯電話の着信音が聞こえてくる。プルルプルル… 夫も会社へ出勤したので、不思議に思い慌てて部屋へ入り、見渡した。 タンスの上にあるプラスチック性の3段ボックスの中から鳴っているらしい。 引き出しを開けると懐かしいネイビー色の携帯が鳴っていた。夫が以前使っていたものだ どうして鳴っていたのか? 着信ではなくアラームだった。朝の9時に設定していたらしい。 止めようと手に取ると、音は消えた。普段夫の携帯電話は触らないが、アラームを解除するため あちこちボタンを押した。 メールの受信画面になった。 差出人は真由美「もうすぐ新大阪に着きます。」 この文章の返信は夫は書いていなかったようだ。いや、履歴を見る限り他のメールは削除してるようだ。 私は 胸の奥が熱くなり、冬なのに汗ばんできた。 もしかして 浮気… 去年まで、使っていた夫の携帯… 充電なんてしてないはずなのに今朝急にアラームが鳴った。 その日は何も手がつかず、夫が帰宅後もこの事を聞けなかった。 浮気と認められると怖かったから…
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