錆ノ記憶

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   鼻先に鉄の匂いがしてる。  その向こうから僕をねめつけている、二つの眼。  仁王様みたく、ぐいと頑固に閉じたへの字の口。  研がれた鉄の肌の上を、ぎら、と冷たい光が滑り。  つい先刻まで、死んだ魚の腹を撫でていた柳刃が、今は僕に向けられている。    
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