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彼女――池上さんはとんでもない人だ。ツインテールの可愛らしい容姿とは裏腹に、傍若無人、横暴かつ暴力的、その上すぐに悪ノリする。正直、俺が一番苦手なタイプだ。しかし、一体全体俺の何処が気に入ったのだろうか、彼女は事あるごとに俺に絡んでくる。しかもその大半は、今のように暴力である。今日のひざかっくんはまだ可愛い方だ(そのせいで二日前にジャージのズボンを一着ダメにしてしまったが)。酷いときには、優れた運動神経をフルに活かしたローリングソバットだのスクリュードライバーだのを、朝っぱらから平気でかましてくるから油断ならない。いつだったか、階段で三連廻し蹴りを喰らい、階段を転げ落ちたときには、世界が本当にスローに見えた。
言っておくが、俺はマゾヒストとかいう性的倒錯者ではない。最初の頃は拒否だってした。しかし、傍若無人な彼女に対する論理は意味を成さない。最早、彼女は俺をサンドバックか何かとしか思っていないようだ。
「諦める」という行為を、俺は「逃げ」だとは思わない。人生において「諦める」ということは、時に非常に重要だとすら思っている。だから、俺は彼女の行為に対して諦めている。そうでもしなければ、俺はとっくの昔につぶれているだろう。そう、恐らくこの暴力的何かは彼女なりの愛なのだ。何らかの形で彼女の愛は曲がってしまっているのだ。そう信じたい。
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