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「何もねー…」
数時間ほど前、ドスンと大きな尻餅をついて俺が現れた場所は広大な森。
どうして広大なのか分かるのかと問い掛けられれば俺はこう言う。
ずっと歩いてんだよ、ボケ。
悪態をつきたくなるほどの森は不気味なほどに静かだ。
始めは何か出て来るんじゃないのかと警戒していたが、生き物の気配も感じ取れない。
鳥は鳴かねぇし、風も吹かねぇ…。
ちょうど辺りを見渡した時だ。俺は良い切り株を見付けたのでそこで休憩する事にした。
体感的に3分がたった。
ずっと同じ状態で座っている。
ただ単に動くのがだりぃんだよ。
ずっと歩いてんだ。動きたくねぇよ。
その時、かすかに草むらが揺れた。
風か?…風だな。
…おいちょっと待て、さっきから風は吹いてないはずだ。
少なくとも草を揺らすほどの風は。
「だれだ!」
自分でもベタな台詞だなぁと思った。
「わぁ!タンマ!」
草むらから手を挙げて出てきたのは俺と同じくらいの女性だった。
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