第一話

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「何もねー…」     数時間ほど前、ドスンと大きな尻餅をついて俺が現れた場所は広大な森。 どうして広大なのか分かるのかと問い掛けられれば俺はこう言う。 ずっと歩いてんだよ、ボケ。 悪態をつきたくなるほどの森は不気味なほどに静かだ。 始めは何か出て来るんじゃないのかと警戒していたが、生き物の気配も感じ取れない。 鳥は鳴かねぇし、風も吹かねぇ…。 ちょうど辺りを見渡した時だ。俺は良い切り株を見付けたのでそこで休憩する事にした。 体感的に3分がたった。 ずっと同じ状態で座っている。 ただ単に動くのがだりぃんだよ。 ずっと歩いてんだ。動きたくねぇよ。 その時、かすかに草むらが揺れた。 風か?…風だな。 …おいちょっと待て、さっきから風は吹いてないはずだ。 少なくとも草を揺らすほどの風は。 「だれだ!」 自分でもベタな台詞だなぁと思った。 「わぁ!タンマ!」 草むらから手を挙げて出てきたのは俺と同じくらいの女性だった。
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