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「…それは日本刀か?」
俺がまず思った事は鮮血が顔にかかった事やいきなり熊が現れた事ではない。日本人ならば知るぞと知る、日本の刀。
「そうです。これは私の愛刀ですよ」
鞘に納めた刀を見て肯定と言わんばかりに首を縦に振る。
「お前は何処から来た?お前はどうしていきなり現れた?お前は一体―――」
「ストップ!!そんなに続けざまに聞いても意味がないでしょ」
質問ばかりが口から出ている俺にシルビアが止めに入った。ハッとすれば、シルビアは眉をしかめて少し呆れたような困った顔をしていた。
対する司波という男は考え込むかのように黙っている。まるで彫刻のように表情は先程から変わっていない。刹那の時が流れ、男は俺に面と向かってこう言った。
「君の問いに私は答える事は出来ません。否、今は言うべき時ではないのです」
遠回しに答えれないと言った男の言葉に思わず下へ軽く俯いて溜息をつき、脱力した。
なんで、こう、首尾よく、私は君と同じ世界に住んでいて、君と同じような状況になっています。とかにならねーんだよ。しかも最後に言った事はまるで帰る方法があると解釈出来るじゃねーか。余計な希望を持たせるんじゃねー…。
「しかし、どうして突然現れたのかは言えますよ」
顔の表情を全く変えない男を俺はすぐに顔を上げて見た。
「それを早く言えよ…」
自分でも分かったんだが物凄く期待に満ちた安堵の表情をしていたに違いない。
何故ならシルビアが引き攣った笑みをしているのが視界に入り、男は若干引き気味な体勢になっていた。
俺はただ笑っただけなんだけどな…。
「私とあの熊が忽然と現れたのは転移(ワープ)を使ったからですよ」
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