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「ふむ」
司波が顎に手を当てながらこちらを見ていた。
まるで心を読もうとしている目線だ。
「な、なんだよ」
「喉が渇いているが、メニューには酒しか書いていない。それに酒に何らかのコンプレックスがある、ということでしょうか」
読まれてた。
なんなんだこの人。
「それなら果樹酒がオススメです。アルコール分が比較的に少ないので、一気に飲まなければジュースと同じです」
「そ、そうか」
司波と俺以外の客はいない。
シルビアはカウンターの奥でコップを洗っている。
結局反応はそれだけとなったわけだ。
「シルビアさん、果樹酒二つと適当なフルーツをお願いします」
「はーい」
シルビアは棚から黄色い液体が入った瓶を取り出し、さっき洗っていたコップ二つに開けた。
「はい、リンゴの果樹酒」
みた感じ、普通のジュースだが、飲んでみると微かにアルコールの味がする。
これなら何とかいけそうだ。
「こっちに来るのは初めてですか?」
唐突に司波から質問が飛んできた。
「あ、あぁ。初めてだ」
「では、シルビアさんからアビリティとか訳の分からない単語を聞きませんでしたか?」
「ああ。どういう意味なんだ?」
「アビリティはいわゆる特殊能力に近い意味です。先ほど、私がグールを倒すときに使った暗刀刹(あんとうせつ)は、私の持つアビリティから出た技です」
「ちょっと待った。グールってあの熊のことか?」
「ええ、性格にはグールが化けた偽物ですけどね」
「へぇ、そうだったのか」
シルビアが会話に入ってきた。
「お前、店の仕事はいいのか?」
「うん、開店前だもの」
だから、客がいないのか。
「そういえば、司波のアビリティって何だ?」
「剣術と体術ぐらいですね。この世界ではそれらがアビリティとなり、身体能力を大幅に上昇させ、アニメで見るような動きをすることが出来るようになります」
正直、よくわからん。
俺はコップに入っているジュースを一気に飲み干した。
その瞬間、頭がぼーっとなり、視界が歪んだ。
あ、これ酒だった。
この後のことはあまり思い出したくない。
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