第一章【桜花爛漫】

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    ここは左大臣家……。 とても広々とした敷地内に色とりどりの花や木々が咲き誇り…大きな池には錦の鯉が、たくさん泳いでおり、左大臣家の栄華そのものを表していました。      その西の屋敷には多くの葵の木々が、これから咲こうと蕾を付けております。     そこに住まいをしているのは、左大臣家の二ノ姫と言われております、今年で御歳十六に成られます葵<アオイ>姫で御座います。 髪は黒く、容姿はまだ少し幼さ残りますが、健康そうな肌に、明るい声の外見は普通の少女で御座います。 しかし、この少女は、他の姫とは違ったところも御座いました…     「暖かいわね…」   御簾<ミス>の外から出て部屋から庭を眺めながら後ろに女房<ニョウボウ>を二、三人仕えさせて景色を楽しんでいた   「はい、もう春で御座いますから」   女房達の中でも一人抜き出て葵姫の横に座る女房がいる。 肌は白く、髪は長く艶やかな橙色をしており、容姿は、とても大人びている。 誰もが後ろを振り返るような、美しい女房だ…名を吉野<ヨシノ>と言って葵姫が小さいな頃から一緒に育ち、また、葵姫にとっても信頼できる腹心の女房でもある。   「こんなに天気の良い日は、何というかこう…体を動かしたくならない?」 庭の花を見つめているため、後ろにいる女房達は葵姫の表情が見えないが「体を動かす」と言う言葉に疑問を寄せながらも主の言葉を待っていた。 しかし、葵姫のすぐ右後ろにいた吉野だけは、葵姫の嬉しそうな顔が見れたために、頬をひきつらせていた。    
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