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「姫様…体を動かすとはいったい…」
次にどんな言葉が来るかは長年一緒にいる吉野には、なんとなく、わかっていたが一応聞く事にした。
「このように広々とした庭だもの…蹴鞠<ケマリ>くらい出来るでしょ?」
嬉しそうな弾む声に後ろの女房達は「蹴鞠」と言う言葉に息を詰まらせた。
そしてすぐ近くにいる吉野は額に手を当て頭を抱えていたのだ。
「葵姫様、蹴鞠とは男児の遊びで御座います」
「知っているわ。でも昔、兄様と蹴鞠で遊んだもの」
「あなたは、いったい、幾つになったと思っているのですか!!裳着<モギ>も終わり十六歳に成られるのですよ!!もう、祝言<シュウゲン>を迎えても良い歳なのです!!
そろそろ、左大臣家の姫として自覚をお持ちになって下さいませ!!」
吉野の注意に両耳を両手で押さえ聞こえないと言った素振りを見せるが、吉野は注意してなおもぶつぶつと呟いていた。
「最近思うのだけれど、吉野ってお兄様に似てきたわ」
「俊之<トシユキ>様の苦労が目に見えます」
袖を目に当て泣く真似を見せる吉野に対して葵姫は「悪かったわね!!じゃじゃ馬姫で!!」と付け足した。
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