3612人が本棚に入れています
本棚に追加
俊之<トシユキ>と言うのは、左大臣家長男の事で、元服<ゲンプク>が終えて、父と同じく大内裏に出仕しており、左近衛府中将<サコンエフチュウジョウ>の位を受けた十八歳になる青年である。
「じゃじゃ馬姫で思い出しましたが…」
「何、まだ何かあるわけ!?」
嫌な顔をして吉野を見つめれば、吉野はしっかり頷き口を開く。
この事に、葵姫は1つ心辺りがあり、耳を傾けたく無かったが嫌でも吉野の声は耳に入ってくる。
「はい、つい先日…左大臣様に呼ばれました所………」
************
吉野は左大臣に呼ばれ左大臣の部屋を訪れた。
『左大臣様、吉野で御座います』
左大臣の部屋の扉の前に座り、中にいるであろう、自分を呼び出した人物にそっと声をかけた。
『吉野か…。入れ、急に呼び出して悪かったな。』
主の言葉に吉野は『はい』と短く返事をし、扉に両手をかけそっと開けて頭を下げて入った。
左大臣は、御簾から出て座っており、吉野のが入っても振り向きもせず、外の景色を眺めていた。
吉野は静かに左大臣の後ろに座り口を開くの待っていた。
最初のコメントを投稿しよう!