第一章【桜花爛漫】

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  俊之<トシユキ>と言うのは、左大臣家長男の事で、元服<ゲンプク>が終えて、父と同じく大内裏に出仕しており、左近衛府中将<サコンエフチュウジョウ>の位を受けた十八歳になる青年である。   「じゃじゃ馬姫で思い出しましたが…」   「何、まだ何かあるわけ!?」   嫌な顔をして吉野を見つめれば、吉野はしっかり頷き口を開く。 この事に、葵姫は1つ心辺りがあり、耳を傾けたく無かったが嫌でも吉野の声は耳に入ってくる。   「はい、つい先日…左大臣様に呼ばれました所………」   ************   吉野は左大臣に呼ばれ左大臣の部屋を訪れた。   『左大臣様、吉野で御座います』   左大臣の部屋の扉の前に座り、中にいるであろう、自分を呼び出した人物にそっと声をかけた。   『吉野か…。入れ、急に呼び出して悪かったな。』   主の言葉に吉野は『はい』と短く返事をし、扉に両手をかけそっと開けて頭を下げて入った。   左大臣は、御簾から出て座っており、吉野のが入っても振り向きもせず、外の景色を眺めていた。 吉野は静かに左大臣の後ろに座り口を開くの待っていた。    
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