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鳥のさえずりが聞こえ暖かな風が吹き、こうして外を眺めているのは嫌いではない…
嫌いではないのだが、吉野にとって葵姫の側に自分がいない事が大変不安であった。
何故なら、吉野のがいない事を良いことに、葵姫が部屋を抜け出して何処かへ行ったり悪さをしないかと心配だったからだ。
葵姫に小言を言ったり、制止出来る者は、長年この家に居る者しかいない。
その中で葵姫のお側付きの女房の中では、前者では、吉野だけであった。
そのため、他の女房は姫の悪さを止めるだろうが、きっと強くは言えないだろうと確信しているため、そろそろ自分から左大臣に声を掛けようかと思っていたときだ。
『吉野よ』
『はい』
ずっと静かに外を見ていた左大臣がやっと口を開いたのだ。
『最近の葵の妃教育はどうしている』
突然の痛い部分を突っつかれどきりとしながら言葉を紡いだ。
『恐れながら、姫様の妃教育は芳しく御座いません……』
『……………』
急に黙った左大臣に一気にその場の暖かさやが無くなり、まるで吹雪が吹き荒れるようで、その場空気は氷ついたようだと吉野のは背筋が凍る思いを感じた。
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