3612人が本棚に入れています
本棚に追加
『あ、あの……』
『吉野』
『は、はい!!』
さっきまで、外を見ていた左大臣は吉野に向き直り…
『あの、じゃじゃ馬姫は今まで何をしていた!!』
『も、も、申し訳御座いません』
吉野は何回も頭を低くした。そんな吉野を見て、眉間に皺を寄せながら1つ咳払いをして話を続けた。
『お前の苦労は理解している。あのじゃじゃ馬姫…、裳着も終えた姫が未だに妃教育が終わっていないなど、右大臣の笑い顔が目に浮かぶ』
左大臣は口元を隠していた扇を手の平に叩きつけるようにぱちんと音を立てて閉じ、吉野に言い聞かせるようにゆっくり話す。
『よいか吉野。東宮妃候補は我が家の一ノ姫だと思っているようだが、万が一、一ノ姫と東宮様の間に皇子<オウジ>が産まれなければ、二ノ姫を入内させるしかない。そのためにも、葵には一刻も早く妃教育を皆伝して貰わなくては成らぬのだ』
『しかし…同じ所に姉妹そろって嫁ぐのは…』
『良くあることだ。話はそれだけだ、下がって良い』
そう言ってまた、外を眺めてしまった左大臣に吉野のは、何を言っても駄目だろうと思い『失礼致します』と言って退室したのだった。
*****************
最初のコメントを投稿しよう!