第①夜 海驢(前半)

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……こんな時間に。 学習塾帰りか? そう考えたのは、二人がジャージ姿でなく、それらしき器具も持っておらず、代わりに手提げバッグを携え、日に焼けていなかったから。 それと、何となく小利口そうな雰囲気を醸し出していたのも、判断材料だった。 二人は注文を済ますと、トレイに商品を載せて、店内をキョロキョロ見回していたが、何故かオレの直ぐ近くの席に二人で収まった。 『いただきま~す』 中々お行儀の良い所を見せて二人はバーガー(多分どちらもシーキャット三段パワフルバーガー)をパク付き、黒色の炭酸入り飲料(恐らくはシーキャット特製ダイエットコーク)で流し込んで行く。 よっぽど仲良しなのか、二人は全く同じメニューらしかった。 少しの間黙々と食事に集中する二人。 どちらともなく口を開いた。 店内にはオレ達以外客がいない。 会話は筒抜けもいい所。 「あのさー」「ん?」 可愛いらしい少女達の声が響く。 「今日の」「うん」 「出来どうだった?」 テスト、とかあったのかな? 「う~ん……まあまあ、かなー」浮かない声。 「あたしは、ダメだったよー。85点、てとこかな……」「うわちゃ~」 駄目なりか。 85点は駄目なりか。 オレは目を閉じて、夜空に光る星を思い浮かべたが空しいだけだった。
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