第①夜 海驢(前半)

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軽やかな歌声が立て続けに鳴り響き、二人はそれぞれバッグからケータイを取り出し無言で操作を開始した。 オレは店員を呼び、コーヒーのお代わりを所望する。 コーヒーを店員が持って来た。 一口啜(すす)ってからカチャリとカップをソーサーに戻した時。 何事もなかったかのように二人の会話が開始された。 「やっぱさ、そーゆー邪(よこしま)なお願い叶えようと思ったらさー、頼むのは神様の反対勢力とかになんじゃない」 「悪魔かー。魔法陣で召喚だねー」「だねー」 「後はランプの精とか」「アハハ。三つの願いを叶えて差し上げましょうってか」「喪黒□造とかね」「ドーン!」 人差し指を突き付けて、おどけた顔をする。 きゃっきゃっきゃっきゃっ。 二人は何度もドーンを繰り返し、その度に楽しそうに笑う。 正直、羨(うらや)ましい。 そして微笑ましい。 若いっていいなぁ。 二人して目を擦(こす)りながら「あーおかし」 「ホントだよねー」 「オーホッホッ」 「オーホッホッ」 二人時間差で喪□のモノマネをする。 また爆笑。きゃーはっはっ。うひー。 「顔面痛いしー」「お、お腹痛い。もう勘弁してよー」 「他、頼むとしたら?」 「え? うーん。そーだねー。ジャック・□ウアーとか!?」 「‥バイオテロ!?」 「風邪菌クラスにばらまくの?」 「ジャックがそれを阻止しに日本まで来るんだよ~!」 そしたらお前らが捕まる展開になるけど!? 「来ないっしょ」 「来ない?」 「ジャックはアメリカの為には命削るかも知れないけどねー」 「そっか。日本の、それも高々、田舎のごくありふれた無名な小学校の一クラスの為には」 「命令違反しないって。てゆーか事件なんない」 そもそも風邪菌だしな。
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