第①夜 海驢(前半)

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「! 完全犯罪!?」 「もしかしたら……」 しない。しない。もしかしない。 「この事は二人だけの」「うん。分かったよ。みんなには内緒だね」 ぅおーい。ここにいるぞー。直ぐ近くにいるぞー……おーい。 心の中で叫んだ。 二人は指切り拳万(げんまん)を行う。 俺の存在はオブジェクトのようなものらしい。 寂しい。 軽やかな伴奏と張りのある歌声がくぐもって二人のテーブル上から聞こえて来る。 再び、二人はケータイに取り組む。 ピッピッピッピッピピピピッ。 ボタンを押す操作音ばかりが辺りを支配。 いかん。 催(もよお)して来た。 二人の方を未練がましくチラチラ見遣りつつ、 オレはトイレへと向かった。
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