第①夜 海驢(後半)

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忙(せわ)しなく用を足した俺はトイレを出ると精一杯、挙動不審に見えないよう腐心した。 冷静さを装う、そう決めて店内を進む。 店内の至る所に存在する翼を生やした猫達。 この店『ねこバガ』の、イメージキャラクターと言うか、マスコットだったか。 メニューなんかにも描かれていたりする。 セルロイド人形。ビニール人形。着ぐるみ。 グッズとして、ケータイストラップ、ピンバッヂ……等。 可愛い。 席に戻る。 二人はまだ、ケータイを弄(いじ)くっていた。 人知れず安堵のため息を吐く。 「お」イヤフォンをしたももちゃんが漏らす。 「ん?」うるるちゃんが鼻声で訝(いぶか)しがる。 しかし、そのままその事には触れずにまた、ケータイに没頭する二人。 再びコーヒーのお代わりをした。 一口含み、テーブル上のソーサーにカップをそっと置く。 ちら見した所、二人が、殆ど同時にケータイをテーブル上に、ことことりと置いた。 うるるちゃんが、小首を傾げながら言う。 「どったの?」 「うん」 ももちゃんはそう言った切り、コーラの残っている、紙で出来た容器を両手で抱え持った。 ストローをくわえると、コーラを吸い込む。 容器をトレイに戻すと、嵌めていたイヤホンを外した。「あったよ」 「ん?」 「学級閉鎖」 「へー。風邪?」 ううん、と首を左右に振る。「違うの」 「じゃあ、何?」 まさか、風邪じゃないよインフルエンザだよぉ、とか言うオチじゃあ…… 「あしか」 はあ? あしか?
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