出会い

1/2
6人が本棚に入れています
本棚に追加
/24ページ

出会い

ゴォーーーッ 急に吹いた強風 その風が和らぎ目を開けると、空には雲がなく日が沈む赤橙色で染まっていた。 「…夢じゃないよな?」 ちょっと頬を抓ってみる 「痛みはあるし夢ではないってことか。」 抓った箇所をさすり、さっきまで降っていた雨の音がなくなり静寂が耳を襲う。 「まさかアイツが言って事が本当だったとはな…」 ふと足下を見下ろすと、夕陽が反射していたのか薄明るく光る物があり取ってみる。 「!?これは、まさか星イチゴか?」 よく辺りを見ると他の木々に紛れて無数の赤紫色の実がポツリ、ポツリと生っていた。 王族のみが食べる事を許されたという幻の果実。 「だが、これは確か現代にはない代物だよな…」 星イチゴはエルフ族のみが栽培する事ができ、人間がこっそりと盗んで王族達に捧げていた。 文献にその形状や、決して野生で育つ事はないと示されていたのを思い出す。 「…エルフは200年前の大戦で滅亡したはずじゃなかったのか?」 「昔人間達との醜い争いで滅亡した事になっておりますね。」 急に背後から声がし、慌てて振り向き剣を構える。 そこには、黒いローブを纏った人物が立っていた。 「ここには結界を張っておりましたのに…」 溜め息を交えつつ、ローブを纏った人物はオレをみる。 「ねぇ、貴方はどのようにしてここまでいらっしゃったんでしょうか?」 そう言いながら、こっちへと歩み寄って来る。 「動くなっ!!」 構えていた剣で威嚇し、一歩後退する。 「あら、そんな物騒な物しまって下さいな。別に捕って食おうってわけじゃありませんので。」 両手をあげ、その人物は立ち止まる。 争う気はない、ということか。 「ただ貴方がここまでいらっしゃった理由を知りたいのです。」 構えていた剣を降ろし、鞘へと戻す。 「オレは雨宿りをするためにここへ寄り、食料がなかったから探しにきただけだ。」 「今度はオレが聞くが、お前は何者なんだ?」
/24ページ

最初のコメントを投稿しよう!