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オレがそう言うと、ローブに手を掛け顔を見せた。
とても蒼く澄みきった瞳、そして長い髪からピーンと伸びている耳がちらりと見えた。
「貴方たち人間が言うところのエルフという種族ですわね。」
目の前で彼女は淡々と語る。
「…だが、エルフは昔の大戦で滅んだはずでは?」
「いいえ、滅んでなんてしてませんわ。当時私達はまだ幼くて大人達がここに結界を張って人間は近寄れないようにしてくれていたんですの。」
エルフは人間の数十倍もの寿命をもつとは伝記には書いていたが、本当の事だったみたいだ。
「それとも、貴方には私が人間にでも見えるのかしら?」
苦笑まじりであの蒼い瞳に見つめられる。
「…今の話が本当なら、どうして君はオレに正体を明かしたんだ?」
今ここでオレにそんな事を話して何の得がある。
だからこそ、真意が知りたかった。
「それは貴方が結界を破り、入ってきてしまったからですわ。この結界は特殊なものでしてね、もう隠れる事が出来ませんもの…」
彼女は悲しげに顔を俯いてしまった。
「…ここは人里からも離れているし、寄ろうと思った馬鹿はオレくらいだろうな。だから安心してくれ、オレは誰かにこの事を言う義務などない。」
この広い森の中で奥まで入っていくのは無謀にすぎない。
「オレにとってエルフが生きていようがいまいがどうでもいい事だからな。」
彼女は俯けていた顔を上げる。
「言わないで下さるのですか?」
「別に富や名声が欲しい訳ではない。オレだけが知っているというのもいいだろう。」
笑いながら返事を返してやると、彼女も安心したのかピーンと立っていた耳が下がっていた。
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