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むかし、むかし、あるところに。2人の偉大な神様がおりました。
破壊と災厄の神『ヴェズル』は、大地と生命の恵みの女神『ユリウス』を忌み嫌い、互いに相容れない仲でした。
新たな命を育むユリウスに対し、貴い命を奪うヴェズル。
この2人の神の心が通い合うことなど、ありえません。
かつて、神の楽園だった『シェルバード』
しかし後に神はシェルバードを見放し、天界へと姿を消してしまいました。
住まう者を無くしてしまったシェルバード。
溢れていたはずの緑の木々は朽ちて。かつての美しさは、いったい何処へ消えてしまったのか。
そして、とうとう大地は海へ沈んでしまいました。
しかし、いったいどういう気紛れか。女神ユリウスは、再びシェルバードを海上へ甦らせました。
荒れた大地が海に顔を出し、次々と豊かな緑が大地を覆います。
そして、新たな生命がユリウスによって誕生しました。
「この地はまだ終わってはなりません。新たな命が、この地を必要としているのです……」
こうして、シェルバードはかつての美しさを取り戻し、平穏な時が再び流れ始めたのです。
しかし、それをよく思っていないヴェズル。
「私が沈めたあの地を、あの女が甦らせた……。あやつはどこまで私を馬鹿にすれば気が済むのだ……!」
怒り狂ったヴェズル。
そして、ヴェズルは2人の聖女を生み出しました。
『終焉』と『存続』の波に、激しく揺れ動くシェルバード。
1人の神が生み出した聖女が、物語の鍵を握るのです。
童話『ユリウスとヴェズル』より
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